ホテルはシャワー・トイレ付きの三人部屋で1泊46ユーロ。2泊分の料金を現金で前払いすると、女主人が部屋の鍵と建物の鍵を1つずつくれた。1階の14号室。いかにも安ホテルっぽい小さくて暗い部屋だが、どうせ寝るだけの場所なのだからと自分を納得させた。
少し休憩してから散歩に出ることにした。ホテルを出ると丘が見えたので、そこを上ることにした。小腹がすいたので、途中でパン屋さんに入り、おやつを購入。初めて使ったギリシャ語が通じてうれしかった。栗とあやぴーが選んだ茶色のクッキーはシナモン味の甘食のようなもので、私が選んだブリオッシュにはオレンジのフラワー・ウォーターの香りがきいていた。どちらともおいしかった。
その丘はフィロパポスと言う。ジョギングする人、犬の散歩をする人に次々と会い、ここが地元の人の憩いの場であることを知る。同じ地中海だからか、うちの近くにある山を散歩しているような錯覚に陥った。ゴツゴツした岩があったり、松林があったり、自然の様子がよく似ているのだ。途中、のっそのっそと歩く大きな陸ガメに遭遇して、三人とも大喜び。特にあやぴー。休憩と称し、しばし陸ガメ観察にいそしんだ。(陸ガメは歩くのが意外と速くてびっくり!)
頂上に着くと、対岸にパルテノン神殿が見えた。夕日に輝く姿は、そこだけが異空間のような印象を与えた。アクロポリスの丘は思っていたよりずっと高い。
歩き続けるうちに、この丘にも立派な記念碑があることに気が付いた。白い大理石で作られている上に、紀元後116年(今から約1900年も昔!)の作品とは思えない立派な彫刻がほどこされている。説明の看板を読むと、この記念碑は、アテネの街に文化的貢献をしたシリア出身のフィロパポス王子のために建てられたものなのだとか。
早くもアテネの偉大なる文化遺産に触れ、感動しながら丘を降りた。オープン・カフェが建ち並ぶ通りになると、急にガヤガヤし始めた。結構な人出で、暑いからか、誰もがフラッペを飲んでいた。フラッペと呼ばれるアイスコーヒーはギリシャの名物らしい。早く飲んでみたいねと言いながらも、日が落ちてきたので休憩するのがもったいなく、そのまま歩きつづけた。
7時過ぎに私がまず目を覚ます。あやぴーが8時頃ごそごそと動き始め、9時になるとようやく栗が起き上がった。ホテルのロビーで朝食。皮にごまがたっぷりついたパン、バター&杏のジャム、オレンジジュースにコーヒー。別料金なので、その場で2人分10ユーロを払った。
一旦部屋に戻って身支度をした後にホテルを出る。日焼け止めクリームも忘れずに顔に塗る。まずは明日の晩サントリーニ島に行くための夜行フェリーの予約。オフィスはホテルのすぐ近くなので、すっきりした気持ちで観光するためにも、朝一番で片付けたい事柄だった。インターネットで予めチェックしていた船の内側の個室はいっぱいだとかで、外側の4人部屋のチケットを買わされた。問題があったら船でまた変えられるから、とのこと。本当だろうかとちょっと不安になった。しかも、あやぴーは5才なので無料だと言われ、支払いは2人分のチケットで済んだのだが、無料ということはベッドがない。船のベッドは小さいだろうにどうなるんだろう。。。色々な思いが頭をよぎったが、予約係のおじさんとの英語でのコミュニケーションがうまく行かず、相談はあきらめることになった。「ノープロブレム!」という彼の笑顔に賭けるしかない。。。
スーパーでミネラル・ウォーターを、キオスクでおやつのクッキーを仕入れ、アクロポリスの丘を目指す。すごい人なので圧倒されつつも、入り口に向かった。すると、「あちらのチケット売り場でまずチケットを購入してください。」と言われたので、栗がチケットを買いに坂道を降りた。まだ午前中だというのにものすごい日差し。あやぴーと私は木陰で栗を帰りを待ち、チケットを握る栗を先頭にまた入り口に向かった。すると今度はリュックサックがダメだと言う。栗はもう一度坂道を降りて、クロークにリュックサックを預けることになった。三度目の正直でようやく入り口通過。早くも疲れを感じたが、これからパルテノン神殿を見ると思うと胸が躍った。
人並みを避けてまず音楽堂を見た。堂々とした美しさはさることながら、その大きさに息を飲む。古代に建てられたものだと思うと感激もひとしお。あちこちにスポットが飾られているところを見ると、今も使用されているようだ。こういうところで音楽を聞いたら美しさも倍増だろうねぇと栗と話した。それから劇場に進む。暑くて歩くのが大変。劇場では貴賓席があることに気が付いた。ここでもスケールの大きさに驚き、数年間へなちょこながらも彫刻をしていた私は保存状態の良い作品に目を奪われた。修復工事中のところが多かったが、全てが整うにはまだまだ時間がかかることだろう。オリーブの木陰で休みつつ、イギリス人老夫婦と少しお話してから、いよいよパルテノン神殿の方角に向かうことにした。
あやぴーがおなかが空いたと言い始めた。時計を見ると午後1時半。昨晩食事をしたプラカ地区には観光的過ぎるので行きたくないと栗が宣言し、私達は地下鉄 Monastriaki駅から北上するAthinas通りを歩きながら、お昼ご飯を食べる場所を探すことにした。暑いせいか、栗も私もあまり食欲がない。カフェの軽食で十分だと話していると、ようやく普通のカフェに遭遇した。テラスに席を取り、ショーウインドーに置かれた食べものをチェックするため、中に入る。
お店のご主人と女主人はとても良い人たちで、ギリシャ語、フランス語、英語を混ぜながらのにぎやかな会話となった。「お勧めはほうれん草のパイだけど、カロリーが高いから毎日食べちゃだめよ。」とマダムが教えてくれた。私が日本人だというと、お店の客に昔日本語を勉強していたことがある人がいて、名乗りを上げたため、その後の会話には日本語も加わった。
ようやくのことでオーダーを済ませ、言われた通りに席に戻ると、ご主人が私達が注文したものをトレ-に乗せてテーブルまで持ってきてくれた。あやぴーはウインナ―とフライドポテトがはさまったバゲット・サンドイッチとフレッシュ・オレンジジュース。私はほうれん草のパイとアイスコーヒー。栗はほうれん草のパイとチーズのパイ、そしてギリシャのMithosビール。
ほうれん草とフェタチーズが詰まったパイは、生地のバターなのか油分たっぷりで、確かにカロリーが気になったが、味は最高。めちゃくちゃおいしくて、疲れが一気に吹っ飛んだ。1つで足りるかなぁと思っていたのだが、最後まで食べるのが大変だったほどのボリューム。栗がその他に頼んだチーズ・パイの具はフェタ・チーズだけ。一口もらったが、こちらもおいしかった。Mithosビールは私的にはいまいち。日本の辛口ビールが好きなので、それに比べると重い感じがしたのだ(でも、ビール好きの人ならおいしく飲めるはず!)。アイスコーヒーには砂糖もミルクも入れないでほしいとお願いした私だったが、いざ飲んでみるとすごく苦い。次回は両方入れてもらおうと心に誓った。結局飲み物の中で一番良かったのは、あやぴーのフレッシュオレンジジュースだった。
楽しい食事を終えると、それまでの険悪なムードはいつのまにか消えていた。のんびり食休みをしてから、街中を歩いてゼウス神殿の見学に行った。104本あったという立派な柱は今では15本しか残っていないのだが、それでも見事。
たわわに実を結んだオリーブの木や青い空はニースのそれと似ているが、目に入る建物はニースにはないものだ。古代ロマンが広がるゼウス神殿の奥には、パルテノン神殿も見え、私達がギリシャにいることを実感させてくれた。交通量が多い地区なのに、何故かのんびりした時間が流れているのは、頭が古代と現代を行き来しているからかもしれない。ベンチに座ってゆっくり鑑賞した。その間、あやぴーは砂の上に絵を描いて遊んでいた。
ニース発午前9時5分のフライトに乗るため、まだ暗いうちに家をでる。今回はEチケットでお願いしていたので手元には券がない。大丈夫だろうかとドキドキしたが、無事チェックインすることができた。アテネへはルフトハンザ航空でミュンヘン乗り換え。フライトが遅れたので心配したが、ミュンヘン空港は大変わかりやすく、次に乗る飛行機のゲートまでスムーズに行くことができた。搭乗まで時間があったため、あやぴーのリクエストでLEGOの遊び場で待つことにした。いつのまにかあやぴーだけでなく大人までが夢中になり、私はタワーを建て、栗は巨大人形を作り上げた。巨大人形にあやぴーが帽子を乗せてフィニッシュ。ミュンヘン空港では無料でコーヒーや紅茶を出す機械まである。温かい飲み物を手にしながらLEGOで遊んでいると、あっという間に搭乗時間となった。
ミュンヘン発11時50分の飛行機の中で、栗がミシュランのガイドブックを家に忘れてきたことが判明。LEGOで和んだ雰囲気が一気にぶち壊しとなり、悶々とした険悪ムードになる。おまけに機内では乗務員の人数が明らかに足りず、飲み物のサービスが異常に遅い。こんなに遅いのは初めてのことである。私の機嫌は更に悪化。これからの行く末が心配になった。
飛行機の窓から外を見て過ごす。雪山を通った後、しばらくすると海が見えてきた。ところどころ島もある。いよいよギリシャに着いたらしい。悶々としていた割にはあっという間のフライトだった。アテネは28度だという。飛行機を降りると、むわっとした暑さに驚いた。栗の大きなバックパックは一番に出てきたので、さっさと空港を出た。
METROという看板に従って歩くと、空港と街中を結ぶ地下鉄乗り場に着いた。栗が窓口に行って大人2人分の切符を買い、みんなで電車に乗り込んだ。ちょっと安心。空港までの路線はオリンピックのために作られたそうで、新しくてきれいだった。最初は空いていた電車だったが、街中が近づくに連れ混んできた。Syntagma(シンタグマ)駅で別の地下鉄に乗り換えて2つ目。予約しておいたホテルのあるSyngrou-fix(シングル-・フィックス)駅で降りた。
事前に駅からホテルまでの道を栗がメモしてきたのだが、地図を見た私が「ありえない!」と主張。周りの人に目印のゼウス神殿の行き先をたずね、「ほら、ごらん!」とばかりに歩き出したが、行けども行けども右折するはずの道が見つからない。そのうち本当にゼウス神殿に着いてしまった。感動的な美しさではあったが、今はそれどころではない。ホテルを探さないと!(汗)。私は自分の間違いを認めた。栗は「だから言っただろう。」と得意顔。今度は彼の言うように歩いて行くと、ホテルは本当にメモ通りの場所にあった。これからは夫をもっと信用しようと決める。重い荷物を担いでいたのに、たくさん歩かせちゃってごめん。。。
Thissio(ティシオ)の駅を過ぎ、右に曲がると、またまたおしゃれなカフェが並ぶ歩行者天国となった。道の左側はカフェやアクセサリー屋さんが続き、右側は遺跡と電車の線路。パルテノン神殿も見える。現代と古代が入り混じる魅力的な場所。そのまま、アテネのモンマルトルと言う人もいるというPLAKA(プラカ)地区に入る。お土産屋が集中している。日が落ちても活気があって、ひやかすだけでも楽しい。
あやぴーがおなかが空いたと言い始めたので、そろそろレストランを探すことにした。近くに良い店があるかどうかガイドブックを見て、「超観光客向けではあるが,楽しいお店」と紹介されていたところに行くことにした。テラス席に座ると、お兄さんが1,5リットルのミネラル・ウォーターとパンを持ってきてくれた。「8皿選んで30ユーロと言うコースはいかがですか。飲み物付きですよ。」と言う。ちょっと高いんじゃないかと思ったが(ニースに比べれば安いけど)、栗が「最初の夜だからいいじゃん。」と言うので、コースでお願いすることにした。
お兄さんが大きなお盆にたくさんの料理を載せてやってきた。その中から好きなものを選ぶというシステム。お盆にないものはオーダーする。どれもおいしそうでワクワク。最初は8皿も食べれないと思ったが、なんのその。
1)ギリシャ風サラダ(トマト、きゅうり、オリーブ、玉ねぎ、フェタ・チーズのサラダ)
2)チャジキ(きゅうりのヨーグルトソース・サラダ)
3)辛いチーズのペースト(栗のリクエストにより)
4)肉団子のトマトソース
5)ドルマ?(お肉などが入った具をぶどうの葉っぱで包んだもの)
6)トマト、ピーマンのライス詰め
7)ソーセージ(その場で、お酒をかけて火をつけて、フランベ!)
8)フライドポテト(あやぴーのリクエストにより。汗)
定番のギリシャ風サラダやチャジキ、ドルマは、予想を裏切らないおいしさだった。肉団子のトマトソースは学食に出てきそうな感じの懐かしい味。私達のテラス席からはキッチンが見えて、どうやら中にいるおばちゃん達が作っている料理らしいということがわかった。それで温かい味がするのかもしれない。ちょっとクセのあるものが好きな栗は、辛いチーズペーストがおいしいと大喜び。一方の私はピーマンのライス詰めが気に入った。中のライスがあっさりとしたトマトソース味で、外側のくたっとしたピーマンの味とバッチリだったのだ。しかし、一番驚いたのはソーセ―ジ。あやぴーのために頼んだ一品なので全く期待していなかったのだが、フランベのおかげか味にコクがあって、とてもおいしかった。飲み物にオーダーした赤ワインも悪くない。よく食べて、よく飲んで、大満足。一気に幸せな気分になった。食事が終わると、干しレーズン入りのセモリナ粉のケーキがデザートに出てきた。シナモン味で、甘いけどおいしい。
ホテルまで歩いて帰った。栗はあやぴーを途中まで肩車。部屋に戻ると、すぐさまシャワーを浴び、早々にベッドに入った。シングルベッドが三つ並んでいて、あやぴーは真中の補助ベッドで寝た。「川の字」という言葉を思い出し、懐かしくなった。
フランス人の考古学者ブーレの名がつけられたブーレの門をくぐり、観光客がいっぱいの前門を通りすぎる。アテナ・二ケの神殿を見ながら、更に進むと、目の前にどどどーんとパルテノン神殿が現れた。すごい!大きい!間近で見る建物の迫力に驚く。青い空に大理石の白が映えてとてもきれい。写真で見るのと、実際自分の目で見ることはやっぱり違う。来てよかったと思った。観光客がたくさんいたが、広いのであまり気にならない。端に寄って石の上に座りながらしばらくパルテノン神殿を眺めた。横を見るとアテネの街も一望することができる。日差しがますます強くなってきていたが、それが気にならないほど、胸がいっぱいだった。
パルテノン神殿を四方から眺めようと歩いて行くと、前方左に若い女性の形をした柱が数本ある建物があった。エレクテイオンと呼ばれる寺院である。現在あるものはレプリカで、本物はパルテノン神殿裏にあるアクロポリス博物館に保存されている。
あやぴーが「ママ、紙とペンちょうだい。」と言って、絵を描き始めた。これが大きなお城で、こっちはお姫様のたくさんいるお城。」と、まずはパルテノン神殿、そしてエレクテイオン神殿を指差して言った。絵を見ると、なんとなく雰囲気はわかる。「おおっ!子供が絵を描いてるぞ!」と様々な人から声をかけられ、あやぴーははずかしそうにしていた。
最後にアクロポリス博物館に入る。中は冷房が効いていて気持ちが良い。またしても彫刻が素晴らしく、小さいながらも見ごたえがある博物館だと思った。ライオン、ヘビ、フクロウ、馬と言った動物の彫刻も多く、あやぴーも見学を楽しんでいた。
その後、あやぴーの髪の毛について栗と口論。険悪なムードでアクロポリスの丘を下りることになってしまった。。。
ゼウス神殿を後にし、ハドリアヌスの門を見てから、再びアクロポリス方面に戻る。アゴラと呼ばれる古代地区を見学することになった。あやぴーがトイレに行きたいというので、ギリシャ語で受付の人に「トイレはありますか?」と聞いてみたら、「向こうにありますよ。」と指を差して教えてくれた。その様子を見ていた栗が、「TOMO、すごいじゃん!」とびっくり。しかし、私は照れる間もなく、体をよじらせるあやぴーを連れ、全速力でトイレまで走った。
トイレを出てから、アタロス柱廊にある様々な彫刻を見た。栗はニケの彫像に出会って喜んでいた。古代の人達も歩いていた道をゆっくり進みながら、へファイスト神殿に向かう。パルテノン神殿より保存が良い感じがしたが、ヘラクレスをモチーフにしたという彫刻画はあまりよくわからなかった。「ここでストア派哲学が生まれたらしいよ。」「歩きながらインスピレーションを受けることもあったのかなぁ。」などと話しながら、のんびり遺跡内を散策し、ベンチに座ってしばらく景色を眺めた。最後に小さな教会を最後に見学してアゴラを出た。そろそろ日が暮れ始めるところだった。
ホテルまでの近道なので、またまたアクロポリスの丘を上る。途中から丘を下り、迷うことなくホテルに戻った。栗はベッドの上で一眠りし、その間あやぴーと私はシャワーを浴びた。8時過ぎに夕飯を取りに出かける。今日はホテルのそばで済ませようという話になり、地下鉄Singrou-Fix駅の上にある、カフェが並ぶ広場に向かった。家庭的な雰囲気のするお店に決め、外のテラス席に座った。
栗は大きなサイズのギリシャ風サラダを頼み、あやぴーと取り分け。あやぴーにはチキンの串焼きを1本頼んだ。私はチキンがはさまったピタと呼ばれるホットサンドイッチ(ケバブみたいなもの)と、みんなで食べようと思ってナスのサラダを頼んだ。ガス入りのミネラル・ウォーターを頼んで、15ユーロ位。おいしくて安くて大満足。そこのピタは人気があるのか、テイクアウトする人がひっきりなしだった。
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